二枚目俳優と三連休
深くお辞儀をして、高柳と別れ、エントランスの自動ドアへ向かおうとして、びくっとした。
自動ドアの先に階段があり、その下の方で、田島が腰かけている。体をねじって自動ドアを見たので、はっきりと田島だとわかった。さなえは、自動ドアから背を向けた。心臓をばくばく言わせながら、ビルの廊下をダッシュして裏口を目指した。
裏口の隣が、地下駐車場の入り口で、高柳がいた。走ってきたさなえをびっくりした顔で見つめる。
「ど、どないしたん。真っ青やで、自分」
「いえ…えっと…その…田島さん、が」
「田島?あの水ぶっかけた奴か。どうした」
「たぶん、つけられてたんだと、思います。正面玄関の階段の下にいました」
言葉を紡ぎながらも、動悸は治まらない。田島からは昨日から、何度もメールがきていた。『こないだは僕が、悪かった』『諦められない、また会ってほしい』『どうしたら会ってくれる。どうしたらいい』そんな内容のメールが大量に送られ、夜になると着信もあった。
さなえは怖くて、スマホの電源を切った。でも、まさかつけてくるなんて。
さなえの会社の場所は知っていたので、そこからこのビルまでつけてきた、ということだろう。
「ふられたのに往生際悪く、つきまとってストーカーまがいになってるってわけか」
さなえが説明しなくても、高柳は察してくれた。さなえは、頷くしかなかった。アパートの部屋を知られたらどうしよう、部屋に踏み込まれるような事になったら…と、次々に怖い想像が頭の中を駆け巡る。メールや着信があっても、尾行までするとは思っていなかった。
どうしよう…!
青ざめているさなえを見て、高柳が言った。
「瞬を呼んだらどうや。とりあえずあいつにかくまってもらったらいいやん。とにかく、今日、伊藤さんがここから自分の部屋に帰るのは危険やで」
さっ、と高柳がスマホを自分のポケットから取り出した。瞬に連絡しようとするのを見て、さなえは叫んだ。
「だ、だめ!瞬ちゃんは、だめ、なんですっ」
「うん?なんで。従兄弟やから、いいやん」
「瞬ちゃんは…、結婚する相手と、同棲、してるから」
1ヶ月前、久しぶりに会って、二人で飲んでいると、瞬が照れくさそうに言った。
『いや、俺さー、今、つきあってるのと結婚しようと思ってるんだよね』
『そう、なんだ』
自動ドアの先に階段があり、その下の方で、田島が腰かけている。体をねじって自動ドアを見たので、はっきりと田島だとわかった。さなえは、自動ドアから背を向けた。心臓をばくばく言わせながら、ビルの廊下をダッシュして裏口を目指した。
裏口の隣が、地下駐車場の入り口で、高柳がいた。走ってきたさなえをびっくりした顔で見つめる。
「ど、どないしたん。真っ青やで、自分」
「いえ…えっと…その…田島さん、が」
「田島?あの水ぶっかけた奴か。どうした」
「たぶん、つけられてたんだと、思います。正面玄関の階段の下にいました」
言葉を紡ぎながらも、動悸は治まらない。田島からは昨日から、何度もメールがきていた。『こないだは僕が、悪かった』『諦められない、また会ってほしい』『どうしたら会ってくれる。どうしたらいい』そんな内容のメールが大量に送られ、夜になると着信もあった。
さなえは怖くて、スマホの電源を切った。でも、まさかつけてくるなんて。
さなえの会社の場所は知っていたので、そこからこのビルまでつけてきた、ということだろう。
「ふられたのに往生際悪く、つきまとってストーカーまがいになってるってわけか」
さなえが説明しなくても、高柳は察してくれた。さなえは、頷くしかなかった。アパートの部屋を知られたらどうしよう、部屋に踏み込まれるような事になったら…と、次々に怖い想像が頭の中を駆け巡る。メールや着信があっても、尾行までするとは思っていなかった。
どうしよう…!
青ざめているさなえを見て、高柳が言った。
「瞬を呼んだらどうや。とりあえずあいつにかくまってもらったらいいやん。とにかく、今日、伊藤さんがここから自分の部屋に帰るのは危険やで」
さっ、と高柳がスマホを自分のポケットから取り出した。瞬に連絡しようとするのを見て、さなえは叫んだ。
「だ、だめ!瞬ちゃんは、だめ、なんですっ」
「うん?なんで。従兄弟やから、いいやん」
「瞬ちゃんは…、結婚する相手と、同棲、してるから」
1ヶ月前、久しぶりに会って、二人で飲んでいると、瞬が照れくさそうに言った。
『いや、俺さー、今、つきあってるのと結婚しようと思ってるんだよね』
『そう、なんだ』