初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

 しかし面白く無かった。
 何よりそんな彼こそがリエラを傷つけた張本人であったし、何がどうなって一度袖にした娘に惹かれたのかは分からないが、今更だと思った。
 好きだと言うならその人の幸せを願って身を引いたらどうかと苛つきもした。
 正直言って、今更娘の人生に関わって欲しくない。

「いつまでもウジウジとしている癖に私の婚約者については苦言を呈する姿に苛立ってしまってね。つい意地悪をしてしまったんだよ」
 
 ……あの男にイラつく気持ちは分かるが、煽ったのはあなたかと、目の前の人物に不敬な眼差しを向けそうになり目を伏せる事でやり過ごした。

「彼女がお見合いをするとか聞いたら、いい加減行動を起こすだろうと思ったんだけどね。それに良い相手なら身を引く可能性があるだろう?」

 ……全く以て良い性格をしている。
 そう言いながら引き合わせた相手があれ(﹅﹅)であるのだから。この男が絶対分かっていただろう事は明白だ。
 しかし一度言葉を発せればこの鬱屈とした思いは止まる事をしないだろう。伯爵は奥歯を噛み締め口元を引き結んだ。

「……父上、私もシェイドの事は間近で見てきました」
 
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