初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

 何だ裏切者という眼差しを息子に向ける。
 一瞬怯んだそれも、目に決意を宿して、レイモンドは再び口を開く。

「確かに良い出会いでは無かったかもしれません。ですが子供の頃の話ではありせんか? それにリエラもずっとシェイドの事を引き摺っているように見えます。一度二人で向き合う時間を持たせてみたらいいじゃないですか。それでもどうしても合わないようだったら二度と会わせなければいいのです。父上、リエラの為にも、二人を引き合わせる事をどうぞお許し下さい」

 頭を下げる息子に対し、うるさい黙れと思いながらキツく目を閉じた。
 ……確かにリエラは引き摺っている。
 まともに他の令息に目を向けられなくなっているのもそのせいだろう。
 だから……

「決別の為の邂逅という事ですな」

 そう問えばクライド殿下の口元が僅かに引き攣った。
(当然だ、娘以上に私は根に持っている)
 お父様大好きと言われ嬉しくない父親はいない。
 ……けれどその背景は恋愛に対するトラウマが原因なのだから。自然と険しくなる目元にクライド殿下が視線を逸らせた。
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