冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
グレースフルパレスホテルグループは、充さんのお父様が一代で築き上げた会社だ。それを引き継いだとき、充さんはどんな気持ちだったのだろう。
想像でしかないけれど、お父様と比べられたり、お父様の下についていた部下たちによく思われなかったり、そういった辛いことはなかったのかな。私なら絶対にプレッシャーに押しつぶされてしまうと思う。
それでも充さんはお父様が築き上げた会社をより大きく成長させている。
彼は決して弱音や愚痴を吐くような性格ではないけれど、巨大企業の舵取りを続けるのは、私には想像できないほどの重圧や孤独を抱えているはずだ。
充さんには心が休まる瞬間はあるのだろうか。常に気を張り続けているように思う。だからせめて風邪を引いてしまったときくらいはゆっくりと休んでほしい。
そんなことを思いながら、私の手は無意識に充さんの髪を撫でていた。
「……ん」
充さんがゆっくりと瞼を持ち上げる。どうやら起こしてしまったらしい。私は慌てて手を引っ込めた。
「菫?」
彼の視線が私を捉える。