冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「充さん。お昼ご飯を作ってきました。雑炊ですが、食べられそうですか?」
返事はないが、ゆっくりと体を起こしたところを見ると食べられるのかもしれない。
雑炊の入った小鍋の蓋を開けて、中身を軽くかき混ぜてから食べやすいように小皿に取り分けた。
「どうぞ。まだ少し熱いかもしれないけど」
ヘッドボードに寄り掛かっている充さんの顔色は少し良くなったように思うものの、それでもまだ体が辛そうだ。
「食べさせましょうか?」
ふとそんな提案をしたのだが、彼の性格を考えると即座に却下されるに違いない。けれど、「頼む」という予想外の言葉が返ってきて、私は目をぱちぱちと瞬かせてしまう。
食べさせていいの?
「どうした。菫が言ったんだろ」
「そ、そうですけど……」
そうだ。私が言ったんだから食べさせてあげないと。
失礼しますとベッドの縁に腰を下ろした私は、左手に雑炊の入った小皿を持ち、右手にレンゲを持った。
雑炊をレンゲで掬ってから、まだ湯気がのぼっているそれを冷ますためにふーふーと息を吹きかける。すると、なにやら視線を感じて顔を上げれば、充さんが私のことをじっと見ていた。