冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「充さんには体調が回復したらまた同じケーキを買ってきますね」
「そういうことを言ってるんじゃない」
ぴしゃりと言い返されてしまう。
ケーキが食べられてしまうから不機嫌になっているのだと思っていたのに違うの? じゃあどういうことを言っているのだろう。
「俺が風邪を引いて寝込んでいるときに悠を家に上げるな。ふたりきりでケーキを食べるのはやめろ」
もしかして充さんはケーキに固執しているのではなくて、風邪を引いて弱っている姿を弟の悠さんに見られたくないのかもしれない。だから家に上げてほしくないんだ。
ようやく充さんの気持ちが理解できた。
「悠にはケーキだけを分けて、すぐに自分の家に返せ。ケーキはどこでも食べられる」
「わかりました。せっかくなので一緒に食べたかったけど、充さんがそう言うならやめます」
「悠と一緒に食べたかったのか?」
「だってひとりで食べるよりも誰かと一緒のほうがいいじゃないですか」
充さんの表情がますます険しくなる。またなにか彼の気に障るようなことを言ってしまったのだろうか。
体調が良くない充さんにはなるべく刺激を与えないほうがいいと思い、私は慌てて口を開く。