冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「今夜一緒にケーキを食べませんかと悠さんをお誘いしたら、仕事が終わったあとでうちに寄ってくれるそうです。だからふたりで食べちゃいますね」
悠さんとは両家顔合わせの際に初めて対面してからそれなりに交流はある。私たちと同じマンションの単身用の部屋に住んでいることもあり、たまにふらっと遊びにくることもあるのだ。
悠さんは、充さんとは真逆の性格のお喋り上手な気さくな人なので、わりと早く打ち解けることができた。
本当なら悠さんが私の結婚相手だったのだと思うと、なぜ私との縁談を兄である充さんに押し付けたのかとても気になるところではあるけれど、なにか事情があったのだろうとあえて触れないことにしている。
「悠とふたりでケーキを食べるのか」
充さんの眉間に皺が寄り、不機嫌な表情になってしまった。
体調がまだ万全ではないおかげでいつもよりも凄みは欠けているものの、纏うオーラからは苛立ちのようなものを感じる。
もしかして、本当なら自分が食べるはずだったケーキを弟の悠さんに食べられてしまうことが気に入らないのだろうか。
充さんでもそんな子供のような考えをすることがあるんだ……。