冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「夏バテといえば小林さんのところのおばあちゃまがね……」
「小林さんってうちの旅館で働いてる?」
「そうそう」
母と綾芽ちゃんがふたりで話し始めたタイミングで、隣に座る桜ちゃんが私の耳もとに口を寄せて「ねぇ、菫」と、ひそひそ声を掛けてきた。
「食欲ないの?」
改めて尋ねられて「うん」と頷く。
「気持ちも悪いの?」
「うん。やっぱり夏バテかな」
「というよりも……」
桜ちゃんは黙り込んでなにかを考えるような素振りを見せた。しばらくしてから、私の体にぴったりと体をくっつけて、さらに小さな声で慎重に尋ねてくる。
「あのさ、最後に生理きたのいつ?」
「え、なに突然」
「いいから、教えて」
いつだったかな。いつもスマホのアプリで管理しているので、それを見て確認しながら、桜ちゃんがなにを言いたいのかだんだんとわかってきた。
そして、最後に生理がきた日付を見て、私もなんだかそんな気がしてきて……。
「うそっ⁉ 生理が遅れてる」
桜ちゃんにだけこっそりと教えるつもりが、焦ってしまい思わず大きな声が出た。
もちろんこの場にいる全員に聞こえてしまい、母と綾芽ちゃんはぴたりと言葉を止める。父の相手をしていた充さんも私に視線を向けた。