冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

「もしかして外に落とした?」

 留め具が緩くなっていたことを思い出す。以前、祖母のお墓の前で落としてしまったときはすぐに気付いたから拾うことができた。でも、今日はどこに落としたのかわからない。

 地面に落ちているネックレスが冷たい雨に打たれているのを想像した途端、居ても立っても居られなくなり、とっさに自宅を飛び出していた。

 傘だけを持って、雨が強く打ち付ける外に出る。あたりは雨音しか聞こえず、遠くではゴロゴロと雷が鳴る音も聞こえていた。

 道路には水たまりがたくさんできていて、とてもじゃないが失くしたものを探せるような状況ではない。それでも構わず来た道を戻り、ネックレスが落ちていないか必死に探す。

 地面だけを見て歩いていたため、前からくる人の存在に気付くことができず、すれ違いざまに傘同士がぶつかった。

 思わず手から傘を落としてしまい、滝のような雨が全身を打つ。一瞬でずぶ濡れになった。

 ぶつかった相手は急いでいたようで「すみません」とだけ告げると足早に去っていった。

 落とした傘を拾って再び差しながら、少し落ち着いて自分の行動を振り返ってみる。
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