冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 もう一度だけ探しに出ようとしたとき、マンションの敷地内に見慣れた車が入ってくるのが見えた。

 高級外車のロゴマークの入った白のセダン。充さんの愛車だ。地下駐車場に向かう前に私を見つけた彼が車を停めて、運転席側の窓を開けた。

「こんな雨の中なにをしているんだ」

 傘を持ったままびしょ濡れの私を見た充さんがクールな表情を崩す。焦ったように目を見開く彼に向かって、私は雨の中でも聞こえるように大きな声で言葉を返した。

「ネックレスを落としてしまって」
「ネックレス? おばあさんから貰ったものか」
「探してるんですけど見つからないんです。たぶんいつも行くスーパーの入る商業施設か、その帰り道で落としてしまったと思うので、もう一度探しに行ってきます」
「ちょっと待て」

 充さんの声に呼び止められて、歩き出そうとした足を止めた。

「車を停めてくるから、それまでそこにいろ。俺が戻るまでどこにも行くなよ。いいな」

 運転席の窓を閉めた彼が車を出して地下駐車場に向かう。本当は今すぐにでも探しに行きたいところだけれど、待っているように言われてしまったので、充さんを待つことにした。
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