冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「体調はどうだ。風邪は引いていないか」
「はい、大丈夫です」
とりあえず熱っぽい症状はない。
「それならいい」
充さんがホッとしたように息を吐く。
「何度も言うが、頼むからもうあんなことはやめてくれ。ずぶ濡れの菫を見たとき、心臓が縮み上がった」
「心配かけてすみませんでした」
謝罪の言葉を口にすれば、私を抱き締める充さんの腕の力がいっそう強まる。
「俺をあんな思いにさせるのは菫だけだ。俺にとってどれだけ大切な存在か、改めて気付かされた」
「充さん……?」
彼の言葉を聞きながらふと思ってしまった。
もしかして私は彼にとても大切に思われているのでは……。
お腹の中の子供のことだけを心配していたならば、ネックレスを探す必要はどこにもなかったはず。それなのに充さんは私をマンションに残して、自分ひとりで雨の中へ探しに出てくれた。
濡れたワイシャツとスラックスや髪からわかるように、商業施設に向かうまでの道もきっと歩いて探し回ってくれたのかもしれない。ようやく見つけて自宅に戻り、そのまま疲れてソファで寝てしまったのだろう。
そう思ったら私のことを抱き締めている彼のことをとても愛しく思った。