冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「三沢旅館の運命が掛かっているので、私はあなたと結婚します。でも、あなたのことを好きかと聞かれるとそうでもないし、好きになれるかわからないけど……」
「随分とはっきり言うんだな」
私の言葉を途中で止めた宮條さんが苦笑を浮かべた。そんな彼に私は尋ねる。
「宮條さんだって私のことが好きで結婚するわけじゃないですよね。だからお互い様だと思います」
「勝手に俺の気持ちを決めるなよ」
「えっ……。じゃあ、私のこと好きなんですか?」
出会ってまだ一時間ほどしか経っていないのだ。このわずかな時間で私を好きになるなんてありえないし、そもそも自分にそんな魅力があるとも思っていない。
宮條さんは黙り込んだまま口を閉ざしている。おそらくそれが答えだろう。
彼も私も今はお互いに興味がない。
それでも結婚するとなれば、私は宮條さんに歩み寄りたいと思っている。不本意な結婚とはいえ、縁あって夫婦になるのだから仲良くなりたい。
だって、結婚してしまえばこの先もずっと連れ添っていく相手なのだ。ギスギスした関係よりも仲良しのほうがいいに決まっている。