ヤンデレくんは監禁できない!

不安しかない

芽衣里は目を開けた。
まだ何となく身体が重い気もするが、それでも右足首に妙な感覚があるのはわかった。

(何だろう、固い…?)

足下に目を向けた芽衣里は一気に目が覚めた。
それと同時に寝室のドアが開いて、芽衣里のスーツケースを引いてきた。

「ただいま、服と下着もってきたよ」

凌の声に芽衣里は上半身を起こしたが、目の前がぐらついて思わず米神を抑える。凌は凌で、大丈夫か? ちょっと効きすぎたな、と聞き捨てならない発言をした。

「凌、なに、どうして」

「知ってる? レイプドラッグ使う犯罪って、ほとんどが顔見知りなんだって」

「ねぇ」

「気が緩んじゃうんだろうね、作家としては興味深い話ではあるけど」

「なんで」


「あたしの足を繋いだの」


凌は一方的に話すのをやめ、芽衣里を見た。芽衣里の右足首には、足枷がはめられてベッドの足に繋がれている。──睡眠薬を利用して、芽衣里を寝室へと運んだのは明らかだった。

「もう無茶はできないよね」

「なにを」

言っているの、と言いかけた芽衣里の声を遮って、凌は話を続ける。

「何度も事件に巻き込まれて、俺はいつも後になって知らされて…どんな気持ちになってたか、分かる?」

「それは」

「いつか大怪我しても知らないって、何回も言ったのに聞いてくれないし」

「まって」

「俺ね、もう疲れた」

だから、と凌は芽衣里の頬を両手で包み込んで笑った。

「ここに閉じ込めておけば、大丈夫だよね?」

最初からこうしておけば良かった。
そう言って芽衣里を強く抱きしめる凌に、芽衣里は何も言えなかった。
凌が怖かったわけではない。むしろ見通しの甘さにどう説明したらいいのかを悩んでいた。

(凌、あのね、閉じ込めたくらいじゃ無理なんだよ)
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