課長に恋してます!
「先輩は、本当、恋愛がわかってませんねー」

 間宮が深くため息をついた。

「わかんないよ。上村課長は、初めて本当に好きになった人なんだもん。今までそこまで好きになった人いなかったの!自分でもびっくりしてるんだから。好きで好きで幸せだと思う事も、苦しいと思う事もあるとは思わなかったの」
「相当好きなんですね。年の差も関係ないぐらい」
「人を好きになるのに年齢は関係ないよ。課長を好きになってみてわかった」
「先輩、綺麗になりましたね」
「え」
「恋すると女性は綺麗になりますから」
「苦しい恋でも?」
「好きな人がいるってだけで潤いになるんですよ。苦しくてもね」

 間宮が微笑んだ。
 幸せな恋も、苦しい恋も、間宮は経験済みのようだった。

 会社では私が先輩だけど、恋愛は間宮が先輩だ。
 間宮に上村課長の事を打ち明けて以来、相談に乗ってもらっている。

「私は先輩と石上主任がくっつくと思ったんですけどねー。わからないものですね」
「なんで石上の名前が出てくるのよ」
「だってあれ、どう見ても好きな子をいじめる男子ですよ」
「だから違うって。石上とは大学が同じだったから親しく見えるだけ」
「想われてる本人はわからないものなんですよね」

 間宮に反論しようとしたら、間宮が頼んだ生姜焼き定食と、私が頼んだ焼き魚定食が運ばれて来た。
 どっちも美味しそう。

「先輩、今度課長に会ったら押し倒すんですよ」

 味噌汁を口にしたタイミングで言われて、危うく吹き出しそうになった。
 いくらなんでも課長を押し倒すだなんてハードルが高すぎる。
< 133 / 174 >

この作品をシェア

pagetop