課長に恋してます!
 午前中、葵の病室に行くと容体について主治医から説明があった。
 結論から言えば、危機は脱したようだ。

 食事も朝食からとれるようになっていた。
 しかし、退院はまだ先だった。

「お父さん、もう大丈夫だから」

 医者が病室から出て行くと葵が言った。

「仕事あるんでしょ?」
「休みをもらったから大丈夫だよ。余計な心配するな」
「だって気になるんだもん」
「いない方がいいみたいな言い方だな」
「そんな事ないけどさ」

 葵が小さく笑った。

「お父さんがいたら甘えちゃうよ。赤ちゃんが生まれるまで香港に行かないでって言っちゃうかもよ。お父さんはお母さんの役もやってるんだから」

 葵が恥ずかしそうな顔をした。
 葵の言葉に胸が熱くなる。親として葵の言葉が嬉しくて堪らない。

「お父さん、目がウルウルしてるよ」
「してないよ」
「してるよ」
「してないってば」

 葵と言い合っていると、直樹くんが病室に入って来た。
 葵の元気そうな顔を見て、直樹くんは安心したような表情を浮かべた。
 あとは僕がついてますからと、直樹くんに言われ、病室を後にした。
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