課長に恋してます!
 実家に戻り、両親と兄貴に葵の容体が安定した事を伝えた。
 みんなほっとした表情を浮かべていた。

 もう少し葵の側にいたいと思ったが、「直樹くんに任せた方がいいわよ」と、兄嫁の京子さんに言われ、香港に戻る事にした。

 寂しいが、父親が出しゃばるのもよくない気がした。

 新幹線に乗って、東京に向かった。
 羽田からの最終便で香港に戻るつもりだった。

 17時頃東京駅に着いた。
 新幹線の改札を出ると一瀬君の事が浮かんだ。

 皇居に行ったり、銀座の天ぷら屋に行ったりして、土曜日は本当に楽しかった。
 ほんの数日前の事なのに、随分昔の事のように感じた。

 一瀬君に会いたくなる。
 日本を発つ前にもう一度だけ会いたい。

 もう会わないと決めたのに、あっさりと揺れ動く。
 ゆり子の事を忘れた訳じゃない。
 今でも好きなのは間違いない。

 だけど、一瀬君に会いたい。

 一目だけでいい。
 遠くから見るだけでいい。

 一瀬君の笑顔が見たい。
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