課長に恋してます!
  石上に見つめられて戸惑う。

「な、何言ってんの」
「だから、お前の気持ちはわかるよ」
「わかるって何が」
「好きな奴に何とも思われてない気持ちだよ」
「そんなにハッキリ言わなくていいじゃない。第一、石上が私を好きとか、やっぱり意味わかんないし」
「俺も意味わかんないよ。気づいたら好きになってたんだよ」

 怒ったように石上は亀ゼリーにスプーンをいれた。

「本当、わかんないよ。よりにもよってお前みたいな面倒くさいヤツ好きになってさ。でも、人を好きになるのって理屈じゃないだろ?一瀬も気づいたら課長を好きになってたんだろ?」
「うん、まあ……」

 急に石上と向かい合ってるのが気まずくなって、視線を逸らした。

 沈黙を埋めるように、もぐもぐと亀ゼリーを食べた。
 器が空になるまで食べた。

「石上」
「何だよ」
「何て言ったらいいかわからないけど、こんな私を好きでありがとう。ごめんね。石上の気持ちには応えられない」

 正直な気持ちを口にした。

 石上が黙って亀ゼリーを食べ続ける。
 怒っているようにも見えた。
 これ以上、なんて言ったらいいんだろう。

「せっかく香港まで来たんだから頑張れよ」

 石上が沈黙を破った。
 その言葉にじんわりと胸が温かくなった。

「何だよ」

 感動して石上を見ていたら、怒ったような調子で言われた。

「ありがとう。今、石上の言葉で気持ちが楽になったんだ。実はさっきまでは不安だったの。香港まで来たけど、課長に追い返されたらどうしようって、しつこい女だって思われたらどうしようって」
「今さら何心配してんだよ。十分しつこいだろ。ここまで来たらバカ晒せよ。課長にしつこい女だって嫌がられろ」
「うん。玉砕覚悟で飛び込む」
「骨は拾ってやる」

 石上が笑って、私も笑った。
< 188 / 251 >

この作品をシェア

pagetop