課長に恋してます!
 京急の改札から出ると、スーツケースを引きずって、正面の大きなエレベーターに周りの人と一緒になだれ込むように乗った。国際線出発階に上がる為だった。

 エレベータの中は人でいっぱいだった。日本人よりも外国の人の方が多い気がした。みんなこれから自分の国に帰るんだろう。

 そう思ったら、寂しくなる。後ろ髪引かれるというのは、こういう状況なんだと思う。
 二十年前に香港に赴任した時も、日本を離れる時はやっぱり寂しかった。
 七才の葵と、三才の真一が新幹線乗り場まで見送りに来てくれて、小さな手を振ってくれた。
 笑顔で新幹線の中から子どもたちに振り返すけど、新幹線が走り出して、二人の姿が見えなくなると、こっそり泣いてた。

 一瀬君の事を思うと、その時と同じぐらい胸が張り裂けそうになる。
 
 一目でいいから会いたかった。

 次に会う時は一瀬君は石上君と結婚しているんだろうか。
 石上君なら一瀬君を幸せにできるだろう。
 二人は似合いのカップルだ。年だって丁度いい。

 そう思うのに、未練がましく飛行機をキャンセルしてもう一度一瀬君の所に行こうかと考えている。
 だが、そんな事はするべきじゃない。大人しく香港に戻るべきだ。
 これ以上、仕事だって休めない。
 葵の事で休んで、王さんにだって迷惑をかけてる。

 諦めるしんないんだ。
 諦めるしか……。

 エレベーターから降りると、未練を断ち切るように、航空会社のチェックインカウンターに並んだ。
 行列になってて、日本での旅行の出来事を楽し気に話す声や、早く帰りたいという広東語の声が入り混じっていた。
 そんな声を聞いていたら、さらに寂しくなった。

 次はいつ日本に帰れるのか。
 いつ一瀬君に会えるんだろう。

 感傷的な事を考えていると、上着のポケットにしまってあったスマホが振動した。
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