課長に恋してます!
「大丈夫って何の事です?」

「上村も身に覚えがあるだろ。確か一瀬君と言ったか。間違っても早川みたいに手を出すなよ。彼女もお前もただじゃすまんぞ。上層部は今後、そういう事を厳しく取り締まる方針になるからな」

  一瀬君の事を言われて胃が痛くなった。

「彼女は真面目な社員です。変な事言わないで下さい。それに私も、彼女に対して特別な気持ちはありませんから」
「そうだといいんだがな。忠告はしたぞ。慎重に行動しろよ。俺はお前を買ってるんだ。裏切るような真似はするなよ」
「早川さんの容体は大丈夫なんですか?」
「意識は取り戻したらしい。相手の女子社員も大丈夫だ。しかし、二人とも会社にはいられないだろう。良くて地方に転勤、悪くて懲戒解雇になるだろう。まあ、辞令が下りる前に退職になると思うがな。依願退職の形になるように人事が動いているそうだ」
「……そうですか」
「もしかしたら上村、本社に戻って来てもらう事になるかもしれん。海外事業部課長の椅子、俺はお前に座ってもらいたい」
「ご冗談を。香港に来てまだ二か月ですよ」
「とにかく、慎重に行動しろよ」
 電話が切れた。

 早川が心中未遂……。
 
 人の好さそうな早川の顔が浮かんだ。
 最後に会ったのは二か月前で、会社の裏の定食屋で昼食を一緒に取った。

 早川は趣味の釣りの話をしてた。
 毎週末に千葉の館山に釣りに行ってると聞いた。
 その時の早川は若々しく見えた。
 
 信じられなかった。
 早川が部下と心中だなんて……。
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