課長に恋してます!
 振り向くと、課長の二重の優しい印象の目と合った。

「お、お久しぶりです」

 声が緊張した。

「久しぶりだね」
 
 課長が目尻を下げた表情を浮かべて、返してくれる。

 この一週間、課長に会えなくて寂しかった事が、嘘のように吹き飛んだ。
 課長と沢山、話をしたい。
 今夜、お食事でもどうですか? なんて、誘ってみようか。
 
「見積書の事、今聞きました。修正大変だと思うけど、よろしくお願いします」

 見積書って、さっき石上に叱られたやつだ。
 ミスを課長に知られて恥ずかしい。
 課長がいない間もしっかり仕事をしていたって思われたかったのに。

「申し訳ありません。今日中に必ず直します」
 深く頭を下げ、逃げるように休憩室を出て、オフィスに向かう。

 課長は見積書の事があったから私に声をかけたんだ。
 上司だもんね。部下がミスしたら注意するのは当たり前だよね。

 私、何を期待していたんだろう。
 浮ついていた自分がイヤになる。

 パソコンの前に座って、どんどん惨めになってくる。
 見積書をよく見ると、石上が怒るのも当然のミスを連発していた。

 前にしっかり者の一瀬君だって課長に褒めてもらっていたのに。
 それが私の自信だったのに……。

 バカだな、私。
 課長の事ばかり考えていてミスするなんて。これじゃあ、課長の信用を失くしちゃう。
 しっかりしなきゃ。
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