課長に恋してます!
「上村だけど、ごめん。寝てたよね?」
「あ……いえ」

 慌てたような一瀬君の声がした。

「元気だった?」
「はい。課長は元気でした?」
「うん、元気だよ」
「お酒飲まれてますか?」
「ちょっと飲んでる。接待でね」
「やっぱり」

 一瀬君の控えめな笑い声がした。

「声の感じが物凄く柔らかいから、飲んでると思いました」
「僕、声が柔らかくなるの?」
「はい。酔った課長の声も好きなんです」

 不意打ちをくらった。
 一瀬君、可愛い過ぎる。

「今ので会いたくなった」
「え」
「抱きしめたいよ」
「か、課長……からかわないで下さい」
「からかってないよ」
「課長がそんな事言うなんてイメージが合わなくて」
「僕だって甘えたくなる時だってあるんだよ。ごめんね。会いに行けなくて。今週末も上海出張が入ってしまって帰国できそうにないんだ」
「仕方ないです。お仕事なんですから」
「連絡もできずにごめん」
「今、電話もらったから大丈夫です」
「いい子だね、一瀬君は」
「課長にはたくさん無理を言ってきたから、我慢します」

 一瀬君の言葉が甘く胸に響いた。

「やっぱり抱きしめたいな」
「酔ってますね」

 一瀬君が楽しそうにクスクス笑った。

「来週末には帰るからお花見しよう。もう四月だね。日本は桜が咲いてる?」
「少し咲いてます。見ごろは今週だって天気予報で言ってました」
「来週末まで残ってるといいけど」
「ぎりぎり残ってますよ。香港はどうですか?」
「香港はもう夏のようだよ。2月の寒さがウソみたいだ」
「じゃあ、ストーブいりませんね」
「まだ寝室に置いてある」
「片付けないんですか?」
「片付けないよ。一瀬君が用意してくれたんだからもったいないじゃないか」
「もったいないって、片付けてもなくなりませんよ」

 一瀬君が笑った。

「一瀬君の気配がなくなるよ。香港は寂しいんだよ」
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