課長に恋してます!
「もしもし」

 すぐに一瀬君が出た。

「一瀬君、忙しい時間にごめん」
「大丈夫ですよ。駅に向かってゆっくり歩いてる所ですから」
「それは本当に悪かった」
「嬉しいですよ。朝から課長の声が聞けて。昨日の夜も嬉しかったんです」
「やはり僕は電話したのか。実は飲み過ぎたみたいで、覚えてないんだ」
「覚えてないんですか」

 呆れたような声で言われた。

「すまない。でも、来週末には帰国できるように調整するから」
「絶対ですよ。お花見しようって言ったの課長なんですから。それから温泉も」
「温泉?」
「お花見ができる温泉宿、私が探すって言ったんです。一泊で行こうって課長言ってくれましたよ」

 全く覚えてない。

「部屋も一つでいいって言ってくれました」
「え」

 脳が固まる。
 それって、つまり……。

「ダメですか?」

 弱々しい声がした。

「いや、ダメっていうか……一瀬君、いいの?」
「……いいですよ」

 恥ずかしそうな声にドキッとした。

「本当に?」
「はい」
「うーん、そうか」

 いきなりそんな事になっていいんだろうか。 
 しかし、約束は約束だし。

 一瀬君がいいならそういう事になっても……。
 でもな、少し急ぎ過ぎる。

「困ってますか?」
「少し」
「そうですよね。いきなり過ぎですよね。ごめんなさい。温泉宿は忘れて下さい。それじゃあ、もう駅なんで、失礼します」

 電話が切れた。
 声が少し怒っていた。
 一瀬君を怒らせたかもしれない。
 
 マズイな。
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