課長に恋してます!
 予定通り、日曜日の午後香港に戻って来た。
 明日は代休だ。

 マンションに戻ったら、一瀬君に電話するつもりだった。
 それから、温泉に誘おう。
 あれこれ悩むのはもうやめよう。行きたいと思うなら、素直にその気持ちに従えばいいんだ。

 中環駅から地下鉄に乗り換えた。
 日曜日の午後の地下鉄は家族連れが目立つ。楽しげな子どもの声がして、微笑ましい気持ちになった。
 それから最寄り駅で降りて、スーツケースを引きずりながら歩いた。
 
 地上に出ると容赦のない陽射しが降って来た。
 今日の気温は27度だ。四月なのに、もうそんなに暑いのかと思う。
 いい加減、冬物を仕舞わなければと思いながら、すっかり慣れた道を歩いた。
 
 じわりと額に汗が滲み、軽い疲労を感じながら、マンションの前に辿り着く。
 共用の正面玄関前で鍵を取り出そうとした時――。

「課長!」

 弾んだ声がした。
 振り向くと、はにかんだ笑みを浮かべる一瀬君がいた。

「来ちゃいました」

 爽やかな白いワンピース姿の一瀬君を見て、年甲斐もなくどきんと胸が高鳴る。
 二週間ぶりに彼女に会えた嬉しさで出張の疲れは一瞬で吹き飛ぶ。
 今すぐ駆け寄って抱きしめたい。そんな衝動でいっぱいになる。

 とにかく一瀬君に会えて嬉しい。
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