課長に恋してます!
課長もついさっき上海から帰って来た所だと、エレベーターの中で教えてくれた。
「マンションの前で一瀬君に声を掛けられた時は夢かと思ったよ。タイミングも良すぎたからね」
課長が嬉しそうに目元を和ませる。
「私もこんなに簡単に課長にお会いできるとは思いませんでした。前回苦労しましたから」
「前回って羽田の時?」
「えーまあ」
「もしかして、羽田で何時間も待ってた?」
まさか一晩中待ってたとは言えず、あははと笑って誤魔化した。
「散らかっているけど、どうぞ」
「おじゃまします」
二度目となる課長の部屋に上がらせてもらった。
締め切られていた室内は、香港特有の、ほんのりとした香辛料の匂いが残っていた。
課長がすぐに窓を開けて換気をする。
部屋は私の部屋よりもずっと片付いていて、余計なものがなくスッキリとしていた。
前に来た時と変わらない、どこか寂しい印象の部屋だ。
上着を脱いで白いワイシャツ姿になった課長がキッチンに立ってプーアル茶の準備を始める。
「何か手伝いましょうか?」
「大丈夫、ソファに座ってて。一瀬君、長旅で疲れたでしょ?」
「いえいえ! 私よりも、出張から帰ってきたばかりの課長の方がお疲れのはずです!」
やっぱり手伝おうと、対面キッチンに立つ課長の傍へと近づく。
すると、課長は手元を動かしたまま、不意に私を見て微笑んだ。
「一瀬君の顔を見て元気になったから、本当に大丈夫だよ」
不意打ちの言葉に心臓が掴まれて、一瞬で頬が熱くなる。
「それに、一瀬君に美味しいお茶を淹れてあげたくてね。実はこっちのお茶屋さんで、淹れ方を教えてもらったんだ」
課長は少し得意そうな顔で、プーアル茶の手順を説明してくれた。
「沸騰したお湯で急須を温めること。それから、茶葉を二回『洗茶』するのがコツなんだって」
手慣れた手つきで淹れられたプーアル茶が、ガラスの急須から湯呑みへと注がれる。
「どうぞ」
リビングに移動すると、ローテーブルの上に湯呑みを置いて、課長は私のすぐ隣に腰掛けた。
課長の匂いと、すぐ近くにある体温を感じて、胸の奥がぎゅうっと疼く。
「僕は、この熱いプーアル茶が好きなんだ」
ふと目が合うと、課長は優しく微笑んで、美味しそうにお茶を口に含んだ。私も釣られるように、同じタイミングでお茶をすする。
「……美味しい。すっきりしていて、すごく飲みやすいですね」
「気に入ってもらえて良かった」
また課長と視線が重なった。
いつもならすぐに逸らすのに、課長はじっと私を見つめたままでいるから、どうしたらいいかわからない。
「あの、私の顔、何かついてますか?」
「いや。久しぶりだから、一瀬君の顔をずっと見ていたくて」
熱いお茶を飲んだせいだけじゃなくて、体中が課長の言葉で熱くなる。
まさか課長からそんな風に言ってもらえる日が来るなんて、夢を見ているみたい。
「マンションの前で一瀬君に声を掛けられた時は夢かと思ったよ。タイミングも良すぎたからね」
課長が嬉しそうに目元を和ませる。
「私もこんなに簡単に課長にお会いできるとは思いませんでした。前回苦労しましたから」
「前回って羽田の時?」
「えーまあ」
「もしかして、羽田で何時間も待ってた?」
まさか一晩中待ってたとは言えず、あははと笑って誤魔化した。
「散らかっているけど、どうぞ」
「おじゃまします」
二度目となる課長の部屋に上がらせてもらった。
締め切られていた室内は、香港特有の、ほんのりとした香辛料の匂いが残っていた。
課長がすぐに窓を開けて換気をする。
部屋は私の部屋よりもずっと片付いていて、余計なものがなくスッキリとしていた。
前に来た時と変わらない、どこか寂しい印象の部屋だ。
上着を脱いで白いワイシャツ姿になった課長がキッチンに立ってプーアル茶の準備を始める。
「何か手伝いましょうか?」
「大丈夫、ソファに座ってて。一瀬君、長旅で疲れたでしょ?」
「いえいえ! 私よりも、出張から帰ってきたばかりの課長の方がお疲れのはずです!」
やっぱり手伝おうと、対面キッチンに立つ課長の傍へと近づく。
すると、課長は手元を動かしたまま、不意に私を見て微笑んだ。
「一瀬君の顔を見て元気になったから、本当に大丈夫だよ」
不意打ちの言葉に心臓が掴まれて、一瞬で頬が熱くなる。
「それに、一瀬君に美味しいお茶を淹れてあげたくてね。実はこっちのお茶屋さんで、淹れ方を教えてもらったんだ」
課長は少し得意そうな顔で、プーアル茶の手順を説明してくれた。
「沸騰したお湯で急須を温めること。それから、茶葉を二回『洗茶』するのがコツなんだって」
手慣れた手つきで淹れられたプーアル茶が、ガラスの急須から湯呑みへと注がれる。
「どうぞ」
リビングに移動すると、ローテーブルの上に湯呑みを置いて、課長は私のすぐ隣に腰掛けた。
課長の匂いと、すぐ近くにある体温を感じて、胸の奥がぎゅうっと疼く。
「僕は、この熱いプーアル茶が好きなんだ」
ふと目が合うと、課長は優しく微笑んで、美味しそうにお茶を口に含んだ。私も釣られるように、同じタイミングでお茶をすする。
「……美味しい。すっきりしていて、すごく飲みやすいですね」
「気に入ってもらえて良かった」
また課長と視線が重なった。
いつもならすぐに逸らすのに、課長はじっと私を見つめたままでいるから、どうしたらいいかわからない。
「あの、私の顔、何かついてますか?」
「いや。久しぶりだから、一瀬君の顔をずっと見ていたくて」
熱いお茶を飲んだせいだけじゃなくて、体中が課長の言葉で熱くなる。
まさか課長からそんな風に言ってもらえる日が来るなんて、夢を見ているみたい。