課長に恋してます!
 次の日は、昼過ぎに目が覚めた。
 隣で寝ていた課長の姿はなく、その事に寂しさよりもほっとする。

 昨夜、課長は男の人なんだと改めて思い知らされた。 
 体中には、情事の甘い痕跡がいたるところに残っていて、下腹部にもまだ切ないような違和感が残っている。
 その全てが課長に刻まれたものだと思うと、恥ずかしさでいっぱいになる。

 これから、どんな顔をして課長に会えばいいのだろう。
 いくら電気を消していたとはいえ、課長に身体の隅々まで愛されて……私の全部を知られてしまった。
 課長とこうなる事は少しは期待していたけど、香港に来たその日のうちに、まさか結ばれるなんて。
 それに、あんなに激しく求めてくる課長は初めてで……。

「……ああ、もう恥ずかしい! 私、すごい声出していたし」

 居たたまれなくなって、ベッドの上で掛け布団を被ったまま手足をバタバタと暴れさせる。
 思い出すだけで、恥ずかしくて堪らない。
 世の中の人たちは、こういう事の後にはどうやって普通の顔をして話しているのだろう。
 今の私には絶対に無理だ。課長の顔をまともに見られない。だって……あんなことまでされてしまったんだから。

 でも、しっかりしなきゃ。
 課長が会社から帰ってくるまでに、なんとか気持ちを落ち着かせないと。

 とりあえずベッドから起き上がり、借りたTシャツの裾を引っ張りながら、恐る恐る寝室のドアを開けた。

「おはよう」

 リビングに出た瞬間、キッチンに立っていた課長に声をかけられて、心臓が口から飛び出そうになった。

「お、おはようございます……!」
「よく眠れた?」
「は、はい……すみません、すっかり寝坊しちゃって」
「いいよ。僕もさっき起きたところだから」

 課長がいつものように優しく微笑んだ。その爽やかな笑顔が、昨夜の色っぽい表情と重なってまた赤面しそうになる。

「先にシャワー、浴びておいでよ」
「は、はいっ。お借りします!」

 私は逃げるようにしてバスルームへと飛び込んだ。
 心臓のバクバクが止まらない。――っていうか、今日って平日だよね? 会社は? なんで課長がまだ家にいるの!?
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