課長に恋してます!
 スーパーの帰り道、段差に足を取られて転びそうになった私を課長が支えてくれた。
 「危ないから」と言って手もつないでくれた。
 大きな、骨ばった手に包まれて、胸が苦しくなる。
 
 こんな些細な事で胸がいっぱいになるなんて、中学生みたい。
 幼過ぎる、自分の反応が嫌になる。
 課長なんて、大人で落ち着いてて、恥ずかしそうにしてるのは私だけだ。
 やっぱり経験した人数が違うのだろうか。

 課長は今まで何人の人と恋をして、どんな風に過ごしてきたんだろう。
 一度考え出すと、胸の奥がモヤモヤとして、嫉妬で苦しくなる。
 課長が私以外の女性と恋愛してる所なんて見たくもないし、考えたくもない。
 せっかく結婚指輪外してくれたのに、自滅するような事を考えて私は何をやっているんだろう。
 ますます自己嫌悪に陥った。

「大丈夫?」

 無意識に重たい、ため息をついていた。
 そんな私を見て、課長が深刻そうな顔で、立ち止まる。

「手をつなぐの嫌だった?」
「いえ」
「じゃあ、昨夜の事?」
「……え?」

 驚いて顔を上げると、課長は気まずそうな、申し訳なさそうな笑みを浮かべた。

「昨夜、あんな風に結ばれて、少し強引だったかと思ったんだ」

 課長の言葉に慌てて首を左右に振る。
 そんな事はないと伝えたかった。
 確かに急な展開だったけど、全く嫌ではない。ただ恥ずかしいだけ。
 だけど、言葉が喉の奥に絡まって上手く出て来ない。

「そんな事は、ないです……私こそ、その、初めてでご迷惑をかけて」

 何言ってんだろう。ますます墓穴を掘った。
 外で話す内容じゃない。

「す、すみません」
 
 自分の不甲斐なさと幼稚さに涙が浮かぶ。
 
「私、いろいろ、ストレートにできなくて……せっかく好きになってもらったのに……なんか、いちいち反応が子どもで」

 課長がきょとんとした表情を浮かべる。
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