課長に恋してます!
「子どもって?」

 課長が私の顔を覗き込んでくる。

「だって課長は全然大人で、普通に話ができて。私は昨日の事を意識し過ぎて、うまく課長の顔が見られなくて……、そういうの、子どもっぽいと思って、そんな自分が嫌で……課長が優しくしてくれるのに、どうしたらいいかわからなくて……」

 俯いた私の頭を課長がポンポンと撫でてくれた。

「いいんじゃないの。それで」
「いいんですか?」
「いいと思う。すごく」

 課長が愛おしそうに目を細めて微笑んだ。

「それに僕だって、意識しているよ。いきなりあんな事になって、美月とどんな顔で話したらいいか、ちょっとわからない」

 頬を僅かに赤く染めた課長が照れ臭そうに笑った。

「でも、全然そんな風には見えませんけど」
「見えないようにしている。大人だから。でも、動揺してるよ。全然平気じゃないし、言いたい事も言えない」
「言いたい事?」

 首を傾げて課長を見ると、目が合った。

「いつまで僕は役職で呼ばれるんだろうとか」
「あ、すみません、課長」

 ついクセで呼んでしまう。

「名前で呼んでくれた方が嬉しい」
「……か、上村さん?」

 課長が苦笑を浮かべた。

「できれば下の名前がいい。前に呼んでくれたみたいに」
「前?」
「二人で飲みに行ったよね。長野の郷土料理が出てくる居酒屋に」

 思わず眉が上がる。

「それって、だいぶ前ですよ」
「その頃から、美月の事が心に引っかかっていたんだよ」

 嬉し過ぎる告白に自然と頬が緩んだ。

「三年も前ですよ」
「三年も前から意識していたんだよ。そういうの見せないようにしていたけどね」
「大人だからですか?」
「そうだよ」

 そう言った課長が可笑しくて、笑いが零れる。
 一頻り笑ったら、緊張も解れた。

 私は思い切って課長の顔を見ながら、名前を呼んだ。

「幸一さん」
「いいね、もう一度呼んで」
「幸一さん」

 課長じゃなくて、幸一さんが幸せそうに微笑んだ。
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