課長に恋してます!

33 エピローグ【上村課長】

「じいじ、遊ぼ!!」

 すぐ近くで響いた元気な声に目が覚めた。
 瞼を開けると、目の前に三歳になったばかりの孫の隼人の愛らしい幼い顔があり、思わず笑みが浮かんだ。

 今日は娘の葵から隼人を預かって、一緒にお昼寝をしていたことを思い出す。

「隼人君、起きたの?」

 リビングにエプロン姿の美月が入って来た。
 その姿を見た瞬間、さっきまで彼女にプロポーズした日の夢を見ていたのだと気づき、なんだか気恥ずかしくなる。

「おやつにしようか。パンが丁度焼けたところだから」

 しゃがんだ美月が隼人の小さな手を取る。

「みーちゃんのパンすき!」

 隼人が嬉しそうな顔をした。

「幸一さんもおいで」

 美月が立ち上がり、僕を見て、ついでのように言った。

「じいじ、おいで」

 隼人にも小さな手で手招きされ、寝起きの頭を軽く振り、ゆっくりとソファから立ち上がった。 

「隼人、いくつになった?」
「さんしゃい」

 隼人が指を3本立てようとするけど、ピースになってしまう。3本指にするのが難しいらしい。
 隼人の不器用さに自然と目元が緩んだ。

「じいじは何才?」
「え」

 隼人が無邪気な顔をして聞いた。

「じいじはいっぱいだな」
「いっぱい?」

 隼人が繰り返す。

「いっぱい年があるって事だ」
「ふーん」

 納得のいかなそうな顔を隼人がする。
 その表情が葵の小さい時とそっくりで、親子だと感じる。

「じゃあ、みーちゃんはなんさい?」

 聞かれると思ってなかったのか、美月が驚いた顔をするけど、すぐに優しい表情を浮かべた。

「私は33才よ。隼人くんのママよりちょっとだけお姉さん」

 美月があの頃と変わらない愛らしい笑みを浮かべた。

「うん。隼人のママは30才だよ」

 すごく得意げな隼人の様子があまりにも可愛らしくて、美月も僕も思わず顔を見合わせて笑ってしまう。

「そうだね。ママの年を知っていてすごいね。じゃあ、パン食べようか」
「うん」

 隼人が元気よく頷き、美月の待つ食卓へとトコトコと走っていく。その小さな背中と、それを見守る美月の愛おしそうな横顔を見つめながら、深い幸せを感じた。
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