課長に恋してます！
　一か月悩んで、ゆり子のいる音楽教室に入会した。
　ピアノなんてないのに。

　最初のレッスンでゆり子にドビュッシーの「月の光」を弾いて欲してと頼んだ。あの時と同じ音色が流れた。
　しめつけられるような気持ちになった。
　演奏が終わったゆり子を見て、彼女に恋をしてる事に気づいた。

　思いを告げられないまま、一年、教室に通った。
　生徒以上の存在には全くなれず、想いだけが膨らんだ。
　苦しかった。
　ゆり子との関係をどうやったら親しいものにできるかわからなくて、悩んだ。

　ある時、レッスン中にゆり子の指が触れた。
　それは講師として、ピアノの弾き方を教える為の行為だったけど、自分を抑えられなくなった。
　気づいたら、ゆり子の手を掴み、好きで、どうしようもなく苦しい事を打ち明けていた。
　ゆり子は驚きながらも、静かに話を聞いてくれた。
　そして「ありがとう」と言ってくれた。
　信じられない事にゆり子と交際する事になった。
< 58 / 174 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop