秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
そばにいさせてほしいのは、俺の方だ。

俺が、一番近くにいたい。

一番近くにいて、社長を・・桜さんを守りたい。


「もう少しだけ・・。あと少しだけそばにいてくれる?」

「あと少しって・・その後は、どうするんです? 誰か、新しい秘書を?」

「分からない。でも、いいかげん、服部を山脇から解放しなきゃ」

「どうして急にそんなことを? 今まで一度も・・」


フッ、と社長が諦めたように微笑んだ。


「ひとりになるのが、怖かったから」

「え・・?」

「でも、さっき聞いちゃった」

「何を・・ですか?」


何を聞いたんだ。
誰に、何を。

思わず口に出しそうになって、ぐっと堪えた。


「服部が誰の告白も受け入れないのは、私たちのせいだって。父と私が、服部を縛り付けているからだって」

「それ・・は」

「秘書室の若い女性が泣いていたわ。彼女、服部が好きなのね」

「私が彼女を断ったのは・・」


俺が、俺自身があなたのそばにいたいから。


でも、声にはできなかった。


「今夜、武田商事の専務の会食に応じるわ。先方に連絡してくれる?」


そう言って、社長は俺を置き去りにして、社長室を出て行った。
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