秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
「社長、着きましたよ」

「う・・ん」


どう見ても、俺の背中に乗る力は残っていなそうだった。

俺はぐったりした桜さんを抱き上げ、家の中に運んだ。


無意識なのだろうけど、桜さんが俺の肩にもたれかかる。

フワリと、少し甘い香りがした。


ベッドまで運び、ジャケットと靴を脱がせて、布団をかける。

目が覚めた時に飲めるように、ミネラルウォーターのボトルを取りに行こうとベッドを離れようとした時だった。


「行か・・ないで」

「えっ」

「行かないで・・」


俺の腕をつかみ、薄目を開けるようにして見上げる。
初めて見る顔に、ゾクッとした。

触れ・・ても・・いいだろうか・・。


おそるおそる桜さんの頭に手を伸ばし、ゆっくりと撫でた。


「車をガレージに入れて、ミネラルウォーターを持って、すぐに戻ってきますから」

「・・ん」


桜さんの部屋を出て、はぁーっと大きく息を吐いた。

ドッドッドッ・・。

鼓動が大きくて早い。


心を埋め尽くした甘やかな気持ちを抑えつつ、俺は表に出た。

約束した通り、車をガレージに入れ、ミネラルウォーターのボトルを手に、桜さんの部屋に戻る。


「もし飲めそうなら、漢方のんでください」

「・・うん・・」


だるそうに起き上がり、俺の手から漢方とミネラルウォーターを受け取り、なんとか飲み込んだ。


「ありがとう・・」


小さくつぶやく桜さんを見て、思った。

俺がこの人を、ずっと守るんだ・・と。
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