秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
「社長、会食は・・」

「ここに・・自宅にいるときは『桜』でいいから」

「あ・・はい。じゃあ・・次から・・」

「うん。
会食は、もう想像通りよ。提携をしつこく迫られた。で、明確な理由をあげてきっぱり断ったんだけど、次はバーで夜の時間。酔わせれば、私も会社も手に入ると考えているのかしら。

でも、バーの誘いを断ったら断ったで負けな気もするし、最後まで付き合ったけど」


そう言って、ウフフと笑う桜さんは頼もしくもあったけれど、かなり無理をしたんじゃないかと思った。


「桜さん・・」

「ん?」

「いえ・・なんて言えばいいのか・・」

「何も言わなくていいわ。何か言われても、きっと次も同じようにする。だけど・・」

「はい」

「もうしばらく、私のわがままに付き合ってほしい。許されるなら・・」


桜さんは目を伏せる。

許すもなにも、俺が桜さんのそばを離れるわけがない。


「もうしばらくなんて言わずに、そばにいさせてください。周りが何と言おうと、前社長から桜さんを任されたのは俺ですよ」


俺は初めて桜さんに『俺』と言った。

どういう反応をするのだろうと桜さんの表情を伺っていると、ただニコリとしただけだった。

もうちょっと驚くのかと思ったのに。


「じゃあ、服部に大事な人が現れるまでね」

「・・だとしたら、ずっと・・一緒です」

「え? それは・・」


ピリリリ、と俺のジャケットの内側からスマートフォンの呼び出し音が鳴った。


誰だよ・・。
いい雰囲気だったのに。

サイレントモードにしていなかった自分を悔やんだ。
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