秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
呆然としている俺に桜さんは近づいてきて、『ありがとう』と言いトレイを受け取る。

その時、なぜか俺に向かってパチッとウインクした。


「服部、同席してメモを取ってもらえるかしら?」

「あ・・はい、承知しました」

「なんだ山脇、メモなんて必要ないだろ!」


・・そういうことか。

少し苛立ちを見せる男に、状況を理解した。


「少し離れてメモを取りますので、お気になさらず」


そう言った俺に、ホッとしたように微笑む桜さんと、おもしろくなさそうな表情の男。

とはいえ、そこから先は終始、今後のコンサルティングについての話が続いた。


「ありがとう、藤澤。とても参考になったわ」

「それなら良かった。なぁ山脇、今夜メシでも行かないか?」

「せっかくだけど、今夜は先約があるのよ」

「じゃあ、またの機会に。今日はこれで失礼するけど、見送りくらいはしてくれるんだろう?」


そう言って、強引に桜さんを社長室から連れ出す。

男の手は、桜さんの肩に置かれていた。


最初は背中に、次は頬に、そして今は肩に。

どうしてそんなに気安く、触れることができるのだろうか。

桜さんも桜さんだ。
払いのければいいのに・・。


嫉妬の矛先が桜さんにまで向けられたことに気づいて、俺は自己嫌悪に陥った。

何も行動を起こしていない自分が、嫉妬するなんてどうかしている・・と。
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