秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
「何飲む? ビールでいいかな?」


冷蔵庫をのぞき込む桜さんの後ろに回り、俺は後ろから桜さんを抱き締めた。


「・・っ」


桜さんが息を飲む音が聞こえた。


「俺、今夜は桜さんの秘書じゃなくていいですか?」

「・・・・」


俺は桜さんを抱く腕に、少しだけ力を込めた。


「桜さんを癒す、ひとりの男でいいですか?」


その役目は、俺じゃなくてもいいのかもしれない。

でも今夜は、秘書の役割を持たない俺と一緒にいてほしい。


「・・うん。いい」


桜さんのつぶやくような返事に、俺はぎゅーっと桜さんを抱き締めた。


「もっと早く・・こうしてもらえば良かった」

「えっ」

「でも・・言えなかった・・」

「それは・・どうして?」


あえて、尋ねてみた。

聞かなくても分かるような気がしたけれど、桜さんの言葉で聞いてみたいと思った。


「どうして・・って・・聞かれても・・」

「どうして?」

「・・だって・・服部が大切に思う人に、申し訳ない・・から・・」


俺は、桜さんに何を言わせようとしてるんだ。


「ごめん・・意地悪した・・」


そう言って腕の力を緩めると、桜さんは俺の腕の中にいたままで、俺を振り返った。


・・距離が・・近すぎる。
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