秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
振り返っても、桜さんは俺を見上げることはしなかった。

20センチの身長差があると、この至近距離ではどんな表情なのかが分からない。

でも、もう。


「・・桜さん」


俺の呼びかけに顔を上げた桜さんの唇に。

ゆっくりと、自分の唇を重ねた。


「・・ん」


小さく漏らした桜さんの吐息まで逃したくなくて、何度か口づける。


唇を離した後、俺は言った。


「俺が大切に思ってる人・・知ってる?」

「知ら・・ない」


自分じゃないと思っているんだろうか。
それとも、確信が持てないだけ?


「・・教え・・て」


俯きながら、俺のシャツを軽く引っ張る。
そんな仕草さえ、愛しいと思う。


俺は桜さんの耳元で囁いた。


「俺が大切に思ってるのは、桜さんだよ」

「・・・・」

「気づいてた?」

「・・・・もしかしたらと思ったくらいで・・でも、分からなかった・・」


普段は社長で、関係先の重役とも対等に渡り合うような女性なのに。

いま、俺の腕の中にいるのは、恋愛に少し臆病な、可愛らしいひとりの女性だ。


「桜さん」

「な・・に?」

「これからは、俺が桜さんを抱き締めるから、他の男には・・触れさせないで」


大切な人なのだという想いを伝えてすぐ、他の男への嫉妬心とか、独占欲をチラつかせるなんて・・。

恋愛に臆病なのは、俺の方かもしれないな。
< 24 / 117 >

この作品をシェア

pagetop