秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
「直生」

「ん? なに?」

「今日、連れて行ってほしいところがあるんだけど」

「いいよ、どこ?」

「・・両親のところ」

「もちろん。最近、忙しくて行けてないって言ってたね」

「うん。ふたりに『彼ができた』って伝えなきゃ」


そう言うと、桜さんはスルリと俺の腕から抜け出し、『シャワー浴びてくる』と部屋から出て行った。


彼ができた。

俺・・だよな?


「・・やった!」


俺も改めて、前社長に伝えたいと思った。
桜さんは、俺が一生かけて守る・・と。


ふたりでガレージに向かい、俺はいつもの後部座席ではなく、助手席のドアを開けた。


「桜さん、俺の彼女だから。プライベートはこっちね」

「うん。ね、直生」

「ん?」

「私も『桜』でいい」

「えっ」

「『桜』って呼んで?」

「あ、あぁ。次から・・そうする」


俺は霊園に向かって車を走らせながら、気になっていたことを口にした。


「桜、会社のこと、何か困ってるのか?」

「えっ」

「さっき、少し表情が曇ったから、俺がまだ知らないことがあるのかなって」


なるべく自然に『桜』と言ってみたものの、照れて仕方がない。


「直生、もう一度『桜』って呼んで」

「え? 何で?」

「想像してたより嬉しかった。だから、もう一度・・」

「・・じゃあ・・桜」

「直生・・もしかして照れてる? 顔が赤い」


桜に指摘されて、俺は思わずダッシュボードからサングラスを出して掛けた。


「直生、サングラスの横顔がカッコいい」


無邪気にそう言われて、俺はますます顔が熱くなった。
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