秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
夜、桜を自宅に送り届けて、そのまま夕飯を一緒に食べた。

野菜がたくさん摂れるようにと、中華をテイクアウトして持ち帰った。

俺が作れればいいのだが、残念ながら料理の才能は全く持ち合わせてはいない。


「直生、いつも気遣ってくれてありがとう」


ソファで食後のお茶を飲みながら、桜が俺にもたれかかる。

普段しない行動が気にかかった。


「桜、疲れた?」

「ううん。少し、不安なだけ」


俺は桜の手から湯呑み茶碗を持ち上げ、テーブルに置いた。


「これで少しはマシになる?」


桜を抱き寄せて、頭を撫でた。
今の俺にできるのは、これくらいしかない。


「直生・・」


桜が、俺の胸に顔をぴったりと寄せた。


「直生の心臓の音がする。なんだか、落ち着く・・」

「桜、ひとりになって不安が大きくなるなら、俺、このままここにいようか?」

「え? でも・・」


違うな。

桜の不安を和らげるためじゃなく、俺が、ひとりで不安を抱える桜が気になるんだ。


「桜が心配だから、ここにいさせてほしい。帰ったら逆に気になって、眠れないから」

「直生のためでもある?」

「そうだよ、俺のため」

「それなら・・いてもらおうかな」


そう言って俺の背中に手を回す桜に、よほど不安なんだろうなと思った。
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