秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
その日の朝は桜と別行動だったこともあり、電車でオフィスに向かった。

手前でコーヒーを買い、ビルに入ろうとしたところで声を掛けられる。


「おい、山脇の秘書」


・・藤澤?


「何か? 社長なら、朝から会合があって不在ですが」

「そんなことは知っている。お前に話があって来たんだ」


俺に?


「時間は取らせない。単刀直入に言う。俺は山脇を手に入れたい」

「なっ・・」


こいつ・・朝から何をふざけたことを。


「山脇と別れろ」

「は?」

「俺が何も知らないとでも? お前が手を引かないなら、山脇の会社を欲しがっているクライアントと手を組んで、会社ごと手に入れる」

「・・・・」

「よく考えるんだな。会社が無くなると、あいつ絶望するぞ」


そう言うと、路肩に止めた外国産の高級車に乗り込み、去っていった。



嘘・・だろ。



何だよこの展開は。



呆然と立ち尽くしていると、誰かにポンと肩を叩かれた。


「どうした? 服部」

「あ・・室長」

「なんだ、顔色が悪いぞ。体調が良くないのか?」

「いえ・・そうじゃないんですが・・」

「社長、午前中は会合だったか? たまには息抜きも必要だな・・映画館でも行ってこい」


室長は俺の手からコーヒーのカップを奪い、もう一度肩をポンと叩く。


「はい・・そうします」


俺はビルと反対方向へ歩き出した。
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