秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
俺たちはタクシーに乗って、桜の自宅に向かった。

特に話をするわけでもなく、ただ、どちらからともなく手を繋いだ。


「桜、晩メシは?」


玄関に入ったところで、先に上がった桜の背中に声をかける。


「直生・・」


玄関の段差のせいで、振り返った桜が覆いかぶさるように抱き着いてきた。

あぁ、いつもの桜の匂いだ。


目を閉じてその香りを感じていると、ふわっと唇にやわらかい感触が降りてきた。


「・・桜?」

「直生・・」

「どうした? 何かあったのか?」

「何かあったのは・・直生でしょう?」

「え・・」


何か・・知ってるのか?
まさかあいつが、藤澤がもう桜に話したのか?


「誰かに・・何か・・聞いた?」

「・・それは、どうかな・・」


そう言って、桜はもう一度唇を落としてきた。

俺は、桜の後頭部を軽く抑えるようにして、その繋がりを深くした。


・・もう、抑えが効かない。


選べない迷いと。
この先の不安と。
どうにもできない苛立ち。


それなのに。

やわらかく迫ってくる、桜への想いが溢れて。


「桜」

「なに?」

「今夜・・桜を抱いてもいい?」


そう言った俺に、どんな反応をするだろうか。


ほんの少しの沈黙を経て、桜は優しく微笑んだ。


「もちろん・・いいよ」
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