秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
夢中だった。


「直生・・ぁ・・・・はぁ・・ぁあ」


桜の甘い声に、頭がおかしくなるかと思った。


「桜・・」


俺の呼びかけに、うっとりとした視線を向ける。


上気した顔も、少し汗ばんだ身体も、もう何もかも愛しい。


離したくない・・・・絶対に。


俺は、どうしたらいいんだ。


「直生」


すっ、と桜の手が顔に触れた。


「直生の、思うようにしたらいいよ」

「え・・?」


どうして、急にそんなことを・・。


「私、直生を信じてるから」

「桜・・それ分かって言ってるのか?」

「何を?」

「いま、俺が直面してること」

「分からない」

「じゃあ、どうして・・」

「分からないけど、直生が私のために悩んでるのは感じてたから」


思うようにしたらいいとか、言わないでくれ。
そんなこと、できるはずもないのに。


「・・俺がもし、俺の思うようにしたら、桜は大事なものを失くすんだぞ? それでもいいのかよ・・」


桜は身体を起こして、そう言った俺を直視する。


顔つきから、甘さが消えていた。


「直生、もう少し冷静に考えて。目先のことに囚われ過ぎ」

「それは、どういう・・」


ハッとした。
桜の目線が、完全に『社長』だったから。
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