秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
次の日の朝、10時過ぎに桜からメッセージが入った。


『14時に迎えに来て』


どうやら退院交渉が上手くいったらしい。

とはいえ、面会時間の開始も14時からだ。
藤澤と鉢合わせなければいいのだが・・。


ふと、リビングの窓から車が目に入った。

そういえば、いつも桜を乗せる時は前社長の愛車を使っていたから、俺の車に桜を乗せたことは無かった。


白のポルシェは『秘書』の車というより『専務』の車だよな・・。

いつ桜に、俺が『専務』だと言おうか。


桜に伝えなければいけないことが、いくつもある。

まずは藤澤と、依頼元企業との関係。
これは、俺の想定外の調査結果になった。

ただ、奴等のおかげで会社の取引先や銀行との関係がおかしくなっているのは事実だ。

それを正すためにやるべきこともある。

これは『秘書』としてでも関わることが可能だ。


しかし、その結果失われるであろう取引先や利益を取り戻すために、俺が南米で結んだ契約との提携を、俺の口からきちんと説明しなければならない。

今度は『秘書』ではなく、提携先の『専務』として。


桜は、この全てを受け入れてくれるだろうか。


藤澤を油断させるために、別れることを選択した俺を許してくれるだろうか。

会社を失わないために、俺が違う立場で関わることを理解してくれるだろうか。


桜を信じるしかない。

そう思った。


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