秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
「じゃあ早く退院しないと」

「そう・・だけど」

「桜、あいつ明日もいるよな・・」


桜が病院にいるうちは、面会時間と藤澤の存在を意識しないわけにはいかない。


「どうかな。また来るとは言ってたけど、時間までは」

「なぁ桜、明日強引に退院するか」

「ええっ? そんなことできるの?」

「ダメもとで一緒にお願いしてみないか?」


桜がいま入院している病院は、確か親父が院長と親しいはずだ。

親父には滅多に頼み事をしないけれど、今回は口添えしてもらうか・・。


「そうね・・それなら明日の朝、主治医の回診の時に私が話すわ。面会時間は昼過ぎだし、藤澤が来たら逃げられなくなるもの」

「桜・・逃げるって・・ククッ、未来の夫だろ?」

「冗談やめてよ。見栄えのいいお飾りの妻なんてごめんだわ。私は・・」


私は・・?


「なんでもない。直生と話したら元気になったから、もう寝るわね」


少なくとも、桜が藤澤との結婚をまったく考えていないことが分かって良かった。


「じゃあ桜、明日もし退院の許可もらえたら、すぐ連絡して。俺が迎えに行くよ」

「うん、必ずよ」

「大丈夫。空けとくから」


電話を切った俺を、兄貴が呆れ顔で見ていた。


「お前、桜ちゃんを溺愛してるんだな。『誰よりも愛してる』なんて、聞いてるこっちが恥ずかしくなるよ」


そう言われて、俺は苦笑いした。
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