失われた断片・グラスとリチャード

幽霊と薔薇の花


バーンズの店は、高級店が軒を並べる中でも、
ひときわ豪勢な、店構えであった。

「これは、グロスター様」

ドアマンが、急いでドアを開けた。
この店は高級婦人服、ドレスを扱う。

貴族の女たち、もちろん、
リチャードの店の女たちも、
ここでドレスをあつらえるのが、常だった。

「これは、グロスター様、
わざわざ、起こしいただいて」
女主人が、獲物を狙う目で、挨拶をした。

「こいつを・・」
そう言って、
杖の柄で背中を押して、
グラスが逃げないように、態勢をとった。

「うちの使用人だが、
見られるくらいにはしてほしい。
要人の顧客が来ても、
恥ずかしくない程度にな」

「その・うちは、メイドのものは・・」

そう言いかけたが、
女主人は何か訳ありなのか、察したようで

「わかりました。
お引き受けいたします。」

そう言うと、
女主人は、別の使用人に合図をした。
「こちらの方を、ご案内して差し上げて」

「グラス、行け」

リチャードは、戸惑い気味の娘に、命令をした。

「夕方には、仕上げておいてくれ」
そう言うと、ドアマンに合図をして、店から立ち去った。

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