失われた断片・グラスとリチャード

陽がくれかけていた。
リチャードは、
懐中時計を取り出し、時間を確認してから、段取りを組んでいた。

今度、出版する本の打ち合わせが、長引いたのだ。
この後、友人、いや知り合いと
酒を飲む約束もしていた。

グラスは、食料品の店で降ろして、そのまま、配達の荷馬車で、
館まで帰らせればいい。

リチャードはやや速足で、杖をついて、歩き始めた。

バーンズの店は、ショーウィンドウの明かりが煌めき、華やかさがある。

美しい羽やレース、リボン、
キラキラ光るティアラ、
高級で繊細な刺繍の布が、流れるように飾ってある。

< 42 / 73 >

この作品をシェア

pagetop