失われた断片・グラスとリチャード
うちの商品も華やかで、
美しく、そして品格と教養が、なくてはいけない。
リチャードは、下品さを嫌っていた。

リチャードは、
しばらくショーウィンドウを、眺めていたが、
すぐ、ドアマンが気づき

「グロスター様、
お待ち申し上げておりました」
さっと、ドアを開けた。

女主人が早速出て来て

「お連れ様は、
個室でお待ちになっています。
寝間着や、靴、ショール、
小物など、お持ちになっていないとのことなので、
うちの方で、ご用意させていただきました。」

リチャードは、うなずいて
「請求書は、うちの店に郵送しろ。経費で落とすから」

「もちろん、承知しております」
女主人は、したたかな笑顔で
個室のドアを開けた。

グラスが、窓辺で座っていた。

その姿は
貴族か王族の令嬢、それも深窓の・・・。

リチャードは、想定以上の仕上がりに、目を細めて眉を寄せた。

驚きと戸惑いと、別の感情も
少しばかり浮かんだ。
< 43 / 73 >

この作品をシェア

pagetop