失われた断片・グラスとリチャード
「住み込みではなく、通いで、
男、それから掃除、洗濯、
雑用をこなせる奴だ。

でも、一番大事なのは、
文句を言わず、黙って仕事をする。うるさいのは、叩きだす」

リチャードは、同意しろとばかりに、床に杖をコンと打ち付けた。

「この条件に合った奴を
連れてくれば、紹介料ははずむが」

やり手婆さんは、
少し目を宙に泳がせたが、エプロンで手をくるみ
「旦那様、
最近、うちの下働きに入った子は
いかがでしょう?

一通りの事はこなせます。
仕事もすぐに覚えますが・・・
女の子ですが」

リチャードは、眉にしわを寄せた。
「女はダメだ。
うるさいし、騒ぐから」

老婆は、想定内の答えと、心得ているようで

「でも、旦那様、
あの子は、ほとんどしゃべりません。さぼることもしませんし。

旦那様が、女を側に置きたくないのは、わかりますが・・・・」

老婆は好奇の目で、ニヤリと笑った。
それから、交渉モードにはいったらしく、
しわだらけの顔を、ゆがめるように笑顔を、とりつくろった。

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