失われた断片・グラスとリチャード
「実は、その子も男嫌いなのです。
旦那様に、自分の姿を見せないよう、うまく働くでしょうが」

「しかし・・」
リチャードは渋っている、
他人を、特に女を、館に入れたくはないのだ。
女はあること、ないこと、
噂話を広げる。

リチャードは、自分の私生活を、
好奇心で暴かれるのを嫌った。

「顔がまぁまぁなので、
うちで買い取ったんですが、
男に触れられただけで、
壁に頭を打ち付けて、ナイフで手首を切ろうとして、
叫んで・・・
気が狂ったようで、それはもう大変でしたよ。
水ぶっかけて、
2,3発ひっぱたいて、
地下室に閉じ込めましたがね、

半日は使い物にならなくて・・
結局は、下働きさせるしかなくて」
老婆は手をさすりながら、
もう少しで、商談成立させるという、勢いを持って

「もちろん、旦那様のご希望の男の子を、捜しますよ。
でも、つなぎでいかがですか?

旦那様のところなら、
女に興味のある男は、出入りしないでしょうし。」

老婆のその目には、
狡猾(こうかつ)さが浮かんでいる。
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