失われた断片・グラスとリチャード
リチャードは、
グロスターの館の静けさを、
気に入っていた。

むしろ、
この静かな空間がなければ、
正気を保つことが難しいだろう、
とも思っていた。

「わかった。
夕方に館まで、連れてきてほしい。
それを見てから決めよう」

「もちろんでございます」
老婆は交渉成立で、満足したのだろう。片手を出した。

「取りあえず、手付金だけ
お願いいたします」

リチャードは、内ポケットから
銀貨を取り出し、老婆のアカだらけ手に、触れないよう、
落とすように渡した。

「馬車を呼んでくれ」

リチャードは、杖に力を込めて、
立ち上がると、老婆に命令した。
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