失われた断片・グラスとリチャード
「そいつは男が嫌いなのか・・?」
「はい、数年前に、
男に、手籠めにされそうになって、抵抗したら、川に投げ込まれて・・・・
死にぞこないましたよ。
それから、男嫌いになりましたけどね。」
老婆はそんな話、よくある事というようにサラッと流した。
リチャードは腕組みをした。
掃除は・・・
綿ぼこりが部屋の隅に、たまっている。
窓ガラスも汚れている・・・
台所の食器も汚い・・・
自慢の銀食器は、くすんでいるし・・
来客時に、と、言っても滅多に来ないが、
自分で扉を開けるのも、面倒くさい。
寒くなり、冷気が地面から上がるようになると、痛めた足が痛む。
今はまだいいが、
これから、木枯らしの吹く季節が来る。
その前に何とかしたい。