俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
一瞬にして殺気立った三人が揃って女性たちを睨みつける。
すると、彼女たちも負けじと挑戦的な視線をこちらに向け、両者の間にはバチバチと見えない火花が散った。
どうしよう。私をかばってくれる三人の存在はありがたいけれど、トラブルになるのは避けたい。
内心慌てていると、この険悪なムードを作った張本人であろう深澄さんが、飄々とした顔でこちらに歩み寄ってきた。
「ちょっと深澄さん、あの女たちになに言ったんスか?」
元ヤンキーらしくどすの利いた声で、石狩さんが尋ねる。
深澄さんは口もとに意味深な笑みを浮かべて私の隣に腰を下ろすと、にゅっと長い腕をこちらに伸ばして私の肩を抱き寄せた。
突然接近され、目が点になる。
「この子を口説くつもりだから帰ってくれ、と」
は……?
パイロットとしての彼と仕事上の会話をしたことはあるけれど、今まで聞いたことのない甘い声だった。
「キャ~ッ」と女性たちが悲鳴をあげ、次々店を出て行く足音が聞こえる。
放心状態の私の横で、ワインを飲んでいた最上さんがゲホゲホ噎せている。
向かい側の先輩ふたりは、信じられないという感じに刮目して深澄さんを凝視した。